最後のラブレター「遺言信託」 相続の争い解消…自筆は問題も(産経新聞)

 法律の専門家や公的機関からアドバイスを受けながら遺言書を作成する動きが広がっている。中でも信託銀行などが行う「遺言信託」は、時間をかけながらきめ細かく作成できることからニーズが高まっている。遺言者の意思を家族に伝え、相続でしこりを残さないために有効な遺言書だが、法的な条件を満たしていなければ効力を失ってしまう。相続のプロに頼るメリットは大きい。(日出間和貴)

 ≪トラブルが増加≫

 遺言書の作成には、公正証書と自筆証書によるものがある。しかし、遺言書の実効性という点で、前者が圧倒的に優れている。日本公証人連合会(東京都千代田区)によると、公正証書による遺言の作成件数は平成20年は約7万6400件で、4年前に比べて約9500件増加している。

 同連合会広報担当の熊澤孝さんは「ここ数年、50代、60代のうちから遺言書の作成に取りかかる人が増えている。病床で遺言書を作るよりも元気なうちに書いたほうが間違いがないし、老後の心配も解消される。遺言とは最後のラブレター。残された家族への思いが実現されなければ意味がない。できるだけ自筆証書の遺言書は避けてほしい」と呼びかける。

 信託銀行が行う遺言信託の保管件数も年々増加。特に財産の引き渡しなどを行う「執行付き」の増加が目立つという。遺言信託には、第三者の金融機関の専門家と綿密な打ち合わせをしながら、時間をかけて遺言書を作成できる利点がある。不動産などの財産配分にとどまらず、遺族へのメッセージを「付言事項」として残すこともできる。

 信託協会(同)によると、「遺言信託が注目されている背景には、個人の財産をめぐるトラブルが増えていることがある。遺言書の作成から執行までを細かくサポートする遺言信託にしておけば、相続をめぐる後々の争いが解消される。これまでは信託銀行が中心だったが、地方銀行の中にも遺言業務の担い手になる金融機関が出てきている」という。

 ≪定期的に照会を≫

 遺言書は書式に厳格で、表現に細心の注意が必要だが、一方で書き換えに応じる柔軟性を持つ。時間の経過とともに遺産分割をめぐる家族の状況が一変するからだ。遺言書を作成後、財産を受け取る人が先に死亡したり、感情の変化が起こらないともかぎらない。信託銀行では定期的に照会を行い、遺言書のメンテナンスを実施。遺言者の現在の気持ちに沿うように見直しがしやすい点も遺言信託のメリットといえる。

 遺産分割の手続きに詳しい弁護士、中根秀樹さんは遺言書作成上の注意点として、(1)遺族が安心して暮らせる配分方法にする(2)財産の配分をめぐって遺族に不公平感を与えない(3)法定相続人に最低限保証されている「遺留分」を侵害する遺言は慎重に−の3つを挙げる。そのうえで、「遺言は死んだ後に効力を発揮する。だからこそ、専門家のアドバイスを受けて正しい遺言書を作成することが大切。法律に則した遺言書であれば、相続人でない友人に贈ることや慈善団体へ寄付することもできる」と話している。

 ■低料金の公証役場

 遺言書の作成にあたって弁護士や金融機関の専門家に依頼すると、遺言書作成に始まり、保管、変更、執行時に至るまで手数料がかかり負担がかさむ。一方、比較的安い料金で済むのが全国各地にある公証役場。公証人のアドバイスを受けながら公正証書の遺言を作成する(5千万円以下の財産の場合、遺言書作成の手数料は2万9千円)。

 また、正しい遺言の作成や適正な相続をサポートするNPO法人「遺言・相続リーガルネットワーク」(東京都中央区)では無償で弁護士の紹介業務を行っている。

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